■「十年後の午後に」

   ・B5判、表紙カラー、本文モノクロ92ページ
   ・初版2007年5月4日(600円、在庫なし)

 ●「コミティア80」(2007年5月4日、東京ビッグサイト)で初売り。

 ●なぜこんなことになってしまったのかもはやわからない。たしかイベントにサークル参加を申し込んでおきながら、頒布物がなにもないという可能性に直面していた。かといってまったくの新刊も厳しかったため、セオリー通り「困った時の総集編」というエイベックスの決算対策的なベスト盤の手法を採用。しかし材料がめがねしかなかったので、そうした。

 ●実際問題として、毎冬にめがねシリーズを出しておきながら、過去のものはすべて売り切って絶版のままだったため、いきなり読む人はなんのことやら分かるまいて。というわけで、いちいち説明を省ける上、しばらく机の上に置いておけるようなめがね総集編はあってもよかった、と思ってた。どうかとは思ったが、その時点で完全にするため「20世紀」シリーズの2本も入れた。「十年後の午後に」というタイトルの由来の問題もあった……入れたところでそんなに意味ないけど。

 ●適当にまとめて再編集すれば終わり、という楽勝なはずだった。しかし最古のもので4年以上前の原稿だったりで、さすがにちょっとカンベンしてくださいよという感じだった。なので2本をまるっきり描き直し、さんたんたる出来だった1本を大幅加筆した。結局、ものすごく疲労困ぱいしながら完成。というか、終わらなかったような。

 ●90pくらいあるけど、要するに「またあした」のコマがよく描けるかどうか、というものなのだった。しかしそこを描いた時はすでに意識がなくなっていた時間帯であって、描いた記憶がマジでねええええ。

 ●まとめてみてわかったのは、最初から自分が描こうとしてたことが一貫してたということだった。おかげできれいにまとまったよあっはっは。たまげたなあ。それはそれとして、4年以上の蓄積だというわりには少なくて、なんだかなあ。そもそもネタに困った時の苦し紛れの方向だったはずなのに、なんでシリーズ化してるんだろう。自分でもなんだかよくわからない。

 ●しかしめがねが転機になったことが何度かあったので、まあ、描けるうちは描こう。楽しい遊び、終わった話。

 ●以上のように、同人活動的な事情から苦し紛れかつ結果的に投げやりに出来上がったものだった。いいところと言えば、イベント3年分の予定で驚愕の超大部数(サークル比)を発注したため、過去本と比較してもページ数の割には頒布価格を安くできた、というくらいのものだった。しかし入稿してから本気で後悔した。段ボール箱の数をまったく計算しなかったからで、どう考えても置くところがないようだった。

 ●……だったが、出した本人が困惑する勢いで段ボール箱は減っていった。ありがたいことです。何しろジャンル名が「創作」だから外向けにもそう称しているけれど、「創作」というよりは「道楽」というべき無名同人であり、当然ながら書店委託とかはできないので、内容相応のプライシングでも赤字にならないような部数を刷る、というのが難題……なので、ものすごく助かった。搬入された段ボール箱の山を見るのがおそろしくてコミティア会場に入るまでチンコ縮みっぱなしだったのは(今回はほんとにアウトだと思った)、もはや遠い思い出というか、反省しろよ、俺。

 ●2年前の「引力のはじまり」が最初で最後だと思って自慢したはずだったが、これもコミティアの感想をはがきと読書会で合計6つもらい、これは相対的には多いほうと思っていいようなので、今度こそ最後だと思ってまた自慢するぜー。老後のいい思い出に。



 ■「オマキザル」

   ・A5判、表紙カラー、本文モノクロ48ページ
   ・初版2007年8月19日(300円、在庫なし)

 ●「コミックマーケット72」(2007年8月19日、東京ビッグサイト)で初売り。

 ●5月のコミティアでなんちゃって新刊が出せたので「夏コミのアリバイは一足先に完成」と喜んだ。しかしピコピコ道楽サークルにとって一生に一度とおぼしき謎のコミケ配置が明らかになると、緩衝材だろうがなんだろうが思い出づくりのためにも参加チケット、つまり初売り新刊が必要だろう、と勝手に思いこみ、なんかやることにした。暑くなる時期、残り2カ月。昔ならともかく今では非常に厳しい条件だった。何を描くか数日で決めなくてはならず、いろいろネタはあったがしかしどれも2カ月で終わる自信がない。というわけで、5年前にネームはできていて、その後何度か描き始めながら放棄していたこれにした。

 ●とにかく時間がないのでショートカットする方法を検討した結果、オフセットではやったことがないA5を選択。Painterもちょろちょろいじって楽勝モードにした。液晶タブレットが変わってから最初の本づくりになった。微妙に勝手が違い、なじむまでが大変だった。ナーバスになって、なんとなく絵がおかしくなってる箇所がある。

 ●話はなんてこともなく……というのも話を描くのが目的の話ではないからだけれど、しかし見かけ上はそうではないので、従って読んだ人はたぶん「なんだこりゃあ」と拍子抜けするんじゃないか(;´д`) 普通はそうならないようにいろいろ考えて「面白い漫画」になるよう努力するんだろう。しかしネームができてから5年間まったくそうしようと思わず、描きながらむしろ拍子抜け度を高める方向で最終的にまとめた俺はまぎれもない道楽者。これは「かくことでしか生きられない」というシリーズの最終テーゼを目指す階梯のひとつとして、素人がそのビジョンに従って好きなように描いた 同人誌 なのであります。はっはっは。その分、結果の一切を含めすべてを作者が負うべきであり、でなければ描く意味がないけれど、では読むべきものなのかというと、個人的にはノーコメント。出来はまったく不満な箇所があり、頭痛ものだった。

 ●最後に遊びの「注」がつく予定だった。島田さんはなぜ「島田さん」というのかとか、5年かけて書きためてきたものだったのに、なぜだろう、眠かった、ということ以外はよく覚えていないんですが、注として入るべき原稿が、前に作ったコピー本の原稿に差しかわっていた。そのまま印刷されてるのは実に不思議。不思議だなあ……本の形になっただけよしとすべきであって……あんまり悲しくて1つだけ、あとがきのところに入れたんじゃなかったっけ。

 ●描いては放棄、描いては打ち捨て……でよくも形になった。男ばっか出てくることに気付いてやる気がなくなったのは今は昔。

 ●しかし、単発ものをまともに描いて1冊にしたのはいつ以来か。「対決編」はまた5年後くらい。


 ■「海 20世紀地方生活情景その3

   ・A5判、モノクロ10ページ
   ・初版2007年8月27日(100円、在庫なし)

 ●「コミティア81」(2007年8月26日、東京ビッグサイト)で初売り。この日のでっち上げ本。

 ●「その3」の最初の形。後に変わった。最初のネームが発掘されて、捨てようかと思ったけれど、コミティア前日になってなぜか描き始めた。変わったネームではこの子は出てこない。

 ●「屈辱的な対照だが、それは荒模様の海岸で、われわれを嘲弄するかのように容赦なく示される。そこでは海が、崖から小石を削りとっては再び崖へと投げつけ、それを、囚人がつける鎖や鉄球の音のような無気味な音をたてて引きずりながら、日に二度までも持ち去っていくのである。ごく幼い想像力は、そこに戦いや争いの姿を見出して、初めのうちはおびえている。やがて海のおさまるところ、子供はこの激しさにも限りがあることを見てとって安心し、自分に恨みを抱いているように思われるこの荒々しい相手を、怖がるよりも嫌悪する。そこで今度は彼が、うなりをあげるこの強敵に小石を投げつけることになるのである。
 私は1831年の7月に、ル・アーヴルでこうした決闘をながめたものだった。私がそこに連れていった一人の少女は、海にむかって幼い勇気を実感し、海の挑戦に憤慨した。海は戦いのための戦いをひき起こしたのである。それは、きゃしゃな人間のひよわな手と、そんなものなどまるで意にも介さないような恐ろしい力との間の、滑稽なほど不釣合いな戦いだった。とはいえ、われわれを倦むことなく捉えかえしにくる永遠性に対し、この愛しい者がおくるはかなくも無力な人生のことをいささかなりと考えてみるならば、それを笑ってばかりいるわけにもいかなかった。──こういったところが、海に対する私の最初の見方であり、またこれこそが、あの戦いに示唆される、あまりにも的確な予兆がひき起こした陰鬱な夢想なのである。私は海とは再会を重ねているが、この子とは、その後ふたたび会うことはなくなってしまったのだ」──ジュール・ミシュレ「海」(加賀野井秀一訳、藤原書店)

 ●フランスで海水浴が広まるのは19世紀後半からで、それまで海は一般には近寄りがたい自然だった。ミシュレは娘の夭折をその日の出来事に予感したという。

 ●イベントの後、夏休みが取れたので伊豆の温泉にいった。夜、砂浜を歩くと、昼には楽しげにも見えた波は、暗がりに無意志の姿を現していて、自然であり、人にとっては力それ自体だった。すぐそこにちょっと踏み出せば、簡単に死ねるだろう。波打ち際は人の世界と死との境界線であり、海には感情はなく、容赦はないようだった。でも夜通し大きな音を立てて寄せては返す波はどこか、人が生まれて死んでいくことを繰り返すのにも似ていたように思って寝た。翌朝のアジの干物は涙出るくらいうまかった。



 ■「海 20世紀地方生活情景その3

   ・B5判、表紙カラー、本文モノクロ32ページ
   ・初版2007年12月31日(300円、在庫あり)

●「コミックマーケット73」(12月31日、東京ビッグサイト)で初売り。合同誌の予定だったが、もろもろあって個人誌になった。厳しい戦いだった。結果的に初売り部数の新記録を出してしまい、謎の偽壁配置もあってかなり悩ましい気持ちで大晦日の夜を過ごしたような。そばうまかったな。

●冬コミは例によっていつものめがね。3回連続の「書道部長編」を考えて一気に3本描こうと思った。けど無理だった、ので、1本入れた。残りはいつ描けるんだろう。

●1日あれば8ページ描けることを知ってしまった。「ヒューマン・コンディション」は「人間の条件」であって、記憶と時間と真の物語と始めることは「20世紀」本編で部員が探索するに違いない。無理だと思うけど。

●郷土部に入部したいという危険思想の持ち主を見つけたので、アンサー漫画を描いたぜ! インタラクティブだぜ! と餌食にし、せっかくなので、というかページを埋めるために本にも入れた。

●思い出したぞ、いろいろあって表紙は直前までアイデア含めて白紙だったので、かなり適当に描いた絵にかなり適当に色塗ってカンプにしておいたのを、さらに時間がなくなってほとんどそのまま出したんだった。これはかなり深刻に反省して、俺は絵は描けないけど、描けないなりにもうちょっとCGもがんばろうと思ったきっかけになった。思っただけで、だからなんだという感じでもあったりするんだけどねねねねね。